当院の特徴
がんの種類と予後
我が国は1981年以降、39年間連続でがん疾患が死因のトップになっています。
死因のトップは男性が肺がん、女性が大腸がんです。男女ともに膵臓がんが増加している一方で男性の肺がん、胃がんが減少傾向にあります。女性では乳がんも年々増加しています。
(財)日本対がん協会資料より
がんの種類
早期治療なら高い治癒率
肺がんは欧米の男性がん死で最も多く、日本でもここ30年間に約6倍増え、1993年に男性がん死のトップになりました。98年には男女を合わせた死者数でも初めて5万人に達し、胃がんを抜いてトップになり2001年には55,028人が亡くなりました。肺がんは発見する場所によって肺野型と肺門型に分けられます。気管支の末梢や肺葉の奥にできる肺野型は大部分が腺がんで、胸のX線写真で発見できます。肺門型はほとんどが扁平上皮がんで、太い気管支にできるのでX線写真ではとらえにくく、気管支鏡や喀痰の細胞検査で調べて見つけます。肺がんとたばこは深い関係があり、50歳以上で喫煙指数(1日の喫煙本数×喫煙年数)が600以上の人は高危険群に入ります。また、最近6ヵ月以内に血痰のあった人も高危険群です。これに該当する人は喀痰検査を受けることが大切です。
予防の決め手は定期検診
日本人のがんの中で、以前から多いのは胃がんです。2001年の死亡者は49,949人で、男性では全がんの約18%、女性は約15%を占めています。胃がんはまず胃壁の粘膜にできます。この段階のものは「早期がん」といわれ、この時期に見つけて治療すれば100%近く治ります。
しかし、がんが粘膜を越えて胃壁の外側にまで進行すると、肺や肝臓に転移したりして治りにくくなります。したがって早期発見・早期治療が決め手になります。胃の早期がんが発見される割合は、なんらかの症状を訴えて病院に来る外来患者からは約15%ですが、集団検診では50%以上と3倍も多く発見され、それだけ救命率も高くなっています。誕生日とか結婚記念日に、夫婦そろって検診を受ける方法などが次第に普及してきました。当病院でも胃がん検診を実施していますので受診しましょう。
体がんが増える傾向
三十数年前には、日本では毎年7,000人が子宮がんで死んでいましたが、2001年には5,195人にまで減り、最近は横ばいです。その理由は、早期発見や治療の技術が進んだこと、集団検診が普及したことなどです。日本では体がんよりも頸がんが多く発見も容易です。頸がんが上皮内にとどまっている時期を0期といい、ほとんど症状がありません。この時期に発見し治療すれば100%治ります。
近年、体がんが増える傾向が見られます。最近6ヵ月以内に不正出血を訴えたことのある人で50歳以上、閉経以後、未妊婦で月経不規則のいずれかに該当する人は高危険群とされ、子宮内膜の細胞検査を受ける必要があります。30歳を越えると子宮がんにかかる率が高くなるので、症状がなくても定期検診を受けましょう。
便潜血反応検査で
30年前の約5倍で、近い将来に胃がんより多くなるといわれています。これは食生活の欧風化によるものと考えられます。大腸がんの初期症状は、便に血が混じることです。肉眼では見えないほどの少量の出血にも反応する免疫便潜血検査法が開発され、老人保健法の保健事業第3次計画にも導入されたこともあって、大腸がん検診は広く普及しました。この便潜血検査で陽性と出た方には内視鏡検査かX線検査をします。がんが最も発生しやすい場所は直腸とS状結腸です。国立がんセンターの手術症例による5年生存率は早期の場合は非常によい成績です。
毎月、自己検診の励行を
乳がんは、1950年代からジリジリと増え1985年には子宮がんの死亡数を上回り、2001年には9,652人の女性が死亡しました。食生活や生活様式の欧風化で増えたと考えられています。乳がんは女性ホルモンのバランスの乱れが原因といわれ、高危険群の人は日ごろから早期発見に心がけてください。乳がんは自分で注意すれば、発見しやすいがんで、乳房の中に固くて痛みのない小さなシコリが見つかります。毎月生理が終わった一週間ぐらい後に、また閉経した人は日を決めて、シコリがないかどうか調べます。この自己検診や乳房X線検査(マンモグラフィ)で早期に見つかり、命を救われた人が大勢います。毎年1回は検診を受けるようにしましょう。
【高危険群の人】
- 母・姉妹が乳がんにかかったことがある
- 本人が乳がんか乳腺疾患にかかったことがある
- 高齢出産
- 未経産
- 栄養過多による肥満
無症状なため、可能性がある方は検査を
肝がんは原発性肝がん(肝臓から発生したがん)と転移性肝がん(他臓器のがんが肝臓に転移したがん)に大別されます。原発性肝がんは、肝細胞がんと胆管細胞がんが95%を占めており、主要な発生要因が明らかになっているがんの1つです。肝炎ウイルスの感染にはじまることが大部分であり、ウイルスの持続感染によって、肝細胞で長期にわたって炎症と再生がくり返されるうちに、遺伝子の突然変異が積み重なり、肝がんへの進展に重要な役割を果たしていると考えられています。男女とも1935年前後に生まれた人で高くなっています。これは、1935年前後に生まれた人が、日本における肝臓がんの主要因であるC型肝炎ウイルス(HCV)の抗体陽性者の割合が高いことと関連しています。肝がんに特有の症状は少なく、肝炎・肝硬変などによる肝臓の障害としての症状が出現してから病院を訪れるのでは手遅れのことが多いため、肝がんの高危険群に属する人は日ごろからの定期検査が必要です。
がんを防ぐための新12カ条(国立がん研究センター)
国立がん研究センターがん予防・検診研究センターがまとめた「がんを防ぐための新12か条」は日本人を対象とした疫学調査や、現時点で妥当な研究方法で明らかとされている証拠を元にまとめられたものとなっています。
- たばこは吸わない
- 他人のたばこの煙をできるだけ避ける
- お酒はほどほどに
- バランスのとれた食生活を
- 塩辛い食品は控えめに
- 野菜や果物は不足にならないように
- 適度に運動
- 適切な体重維持
- ウイルスや細菌の感染予防と治療
- 定期的ながん検診を
- 身体の異常に気がついたら、すぐに受診を
- 正しいがん情報でがんを知ることから
予後調査(生存確認調査)について
予後調査は3年予後調査、5年予後調査と10年予後調査があり、生存率を計算するための調査です。
これは、平成27年(2015)年以前にがんと診断された患者さんが対象で、調査実施の際、情報の把握が出来ない場合は住民票照会による生存確認を行います。調査は、病院独自で行う場合と、国立がん研究センターの自主事業である「予後調査支援事業」に依頼することがあります。調査結果は、国立がん研究センターに報告することにより、生存率を分析します。
この予後調査の住民票照会に関しては、患者さんの請求により拒否することができます。拒否を希望される方は、事務局 医療情報課まで申し出ください。
がんの種類や比較などの目的に応じて、1年、2年、3年、5年、10年生存率が用いられます。がんの治療について検討するときには、がんの広がりや進行の程度、症状など、病気の現状を踏まえた上で、最も治療効果が高く、体への負担の少ない治療を選択していきます。がんの状態を知るための指標が「病期」で、がんが一部分にとどまっているか、広い範囲に広がっているかの「目安」になります。病期分類の1例としては、国際対がん連合の「TNM分類」があります。病期は以下の3つの要素を組み合わせて決められます。
- がんがどのくらいの大きさになっているか(T因子)
- 周辺のリンパ節に転移しているか(N因子)
- 別の臓器への転移はあるか(M因子)
これによって病期を大きく0~Ⅳ期の5つに分類します。0期に近いほどがんが小さくとどまっている状態、Ⅳ期に近いほどがんが広がっている状態(進行がん)です。統計分析手法は、Kapan-Meier法(カプラン・マイヤー法)です。少数例の場合にも生存率を求めることができるため、この統計分析手法を採用しています。観察開始より一定期間ごとに生存割合の変化を表しています。また、対象患者はがん以外の死亡も含んでいる「実測生存率」で集計しています。グラフに5年生存率は、がんと診断された年から生存期間が5年経過した時、生存率が何パーセントかを示しています。ステージごとの「生存期間中央値」は、生存率50%に到達した年月日を表しています。
当院は、平成20年(2008年)から院内がん登録を開始しております。登録した情報は、国立がん研究センター及び愛知県に提出しています。また、平成28(2016)年1月「がん登録等の推進に関する法律」が施行されました。それに伴い、平成28年(2016年)以降の診断日症例より全国がん登録を行っています。
当院では、がん診療に関する部署において「PDCAサイクル」を実施し、がん診療の質の向上、安全性の向上に取り組んでいます。
PDCAサイクルとは
業務プロセスの管理手法の一つで、Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)という4段階の活動を繰り返し行うことで、継続的にプロセスを改善していく手法です。

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Plan(計画)
現状の実績や将来の予測をもとに目標を定め、計画・戦略を立てる。
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Do(実行)
計画に沿って実行する。
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Check(評価)
計画の達成度合い(実績)を評価し成功要因や失敗要因を分析する。
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Action(改善)
計画の継続性や内容の変更の必要性等を考慮して、改善を図る。
当院では、愛知県がんセンター主体の「院内がん登録でみる愛知県のがん診療(施設別集計)」に参加しています。