診療科・部門

中央臨床検査室

概要

医師の診察を受けると、病状により採血、採尿や心電図検査などの指示が出されます。これらの検査は「臨床検査」と呼ばれ、この検査を担当する部署が中央臨床検査室です。ここでは、国家試験に合格した「臨床検査技師」が働いています。
臨床検査は、体から採取された血液や尿、臓器の一部などを検査する検体検査部門と、体を直接的に検査する生体検査部門の2つに大別されます。患者さんが受けられる血液や尿・糞便・喀痰などの検査、心電図や呼吸機能等の検査は、この中のいずれかの部門が担当し、その結果は医師に報告されて診断の補助となります。
さらに当院の中央臨床検査室は、生物化学分析検査部門、微生物・感染制御検査部門、輸血移植・救命救急検査部門、病理・細胞形態検査部門、遺伝子・細胞分析検査部門、生理機能・生殖医療検査部門、病棟・外来採血室に分けられています。

受付時間

2階  20番受付
8:00~ 受付番号札配布           
8:00~ 受付(検体提出含む)
8:30~17:00 採血
※採血・採尿・検体提出のみの場合も、外来パスポートを持って20番受付へお越しください。
※早朝は大変混み合います。午後のほうが空いています。

2階  21番受付
8:30~17:00

認定取得

豊橋市民病院中央臨床検査室は、2019年3月15日付で臨床検査室認定機関の国際規格「ISO15189」の認定を取得しています。
臨床検査は、臨床検査室の高い技術水準を維持して検査結果の信頼性を確保し、医療従事者や患者へのサービス向上を図ることが必要です。その検査室の品質と能力に関する要求事項を提供するものとしてISO 15189があります。中央臨床検査室は、2019年3月15日付でISO 15189の認定を取得しました。
ISO 15189とは、ISO/IEC 17025(JIS Q17025)「試験所及び校正機関の能力に関する一般要求事項」及びISO 9001(JIS Q 9001)「品質マネジメントシステム―要求事項」を基準として、臨床検査室の品質と能力に関する特定要求事項を提供し、ISO の技術専門委員会ISO/TC212が作成した国際規格です。内容は、品質マネジメントシステム、文書管理、内部監査などについてのマネジメントのための要件と、要員の教育や検査室の作業環境を含む検体採取から検査報告までの一連の技術に関する要件となっています。このような、管理体制の中で、検査室から患者さんへ質の高い検査結果を提供できるようになりました。

           認定証

豊橋市民病院 中央臨床検査室の品質の保証と信頼性を維持管理するために、以下の品質方針を掲げています。
1. 検査室は、急性期医療・高度医療に対応する、精度が高く、かつ信頼性のある臨床検査サービスを、検査を利用する関係者に安全に提供し、診療の質の向上に貢献することを目的とする。
2. 質の高い臨床検査情報を提供するために、品質目標を設定し、その有効性を定期的に評価し、品質マネジメントシステムの継続的改善を行う。
3. 高い専門性の維持・向上のため、検査室要員の技術および知識の向上、教育に努める。
4. 検査室要員は、品質方針および品質マネジメントシステムを遵守し、誠実で良好は業務を行う。
5. 品質マネジメントシステムの運用・維持・改善に関して、ISO 15189の規格要求事項への適合性を守る。

業務紹介

当院の中央臨床検査室は、生物化学分析検査部門、微生物・感染制御検査部門、輸血移植・救命救急検査部門、病理・細胞形態検査部門、生理機能・生殖医療検査部門、遺伝子・細胞分析検査、病棟・外来採血室に分かれています。

生物化学分析検査部門(生化学・免疫・血液・尿・便)

生物化学分析部門では、患者さんから採取された血液、尿、便などを用いて、生化学的検査や免疫学的検査、血液学的検査などを行っています。それらの検査結果をもとに、医師が病気の診断や治療の結果判定、今後の診療の進め方を判断しています。

生化学的検査とは、肝臓、腎臓、膵臓などの機能を調べる検査であり、項目としては、AST、ALT、尿素窒素、クレアチニン、アミラーゼなどがあります。また、糖尿病の診断には血糖、ヘモグロビンA1cなどを調べます。高脂血症の診断には総コレステロール、中性脂肪、HDLコレステロール、LDLコレステロールなどの項目を調べます。これらの生化学検査項目は、至急検査及び外来診療前検査を含め、全自動生化学分析装置を使用して外来採血後約45分で結果報告が可能です。

生化学自動分析装置

免疫学的検査とは、B型肝炎ウイルス検査などの感染症検査、CEAなどの腫瘍マーカー検査、甲状腺ホルモンなどの内分泌学的検査などがあります。これら免疫学的検査は免疫分析装置を活用して約60分で報告しています。

血液学的検査は、白血球、赤血球、血小板の数や、ヘモグロビンの量を測定する血球算定検査、赤血球や白血球形態などを分類する血液像検査などがあります。炎症や貧血があるのか、また、白血病などの血液疾患の診断に役立ちます。これらの血液検査は血液分析装置を用いて、短時間で血球算定や血液標本を自動染色しています。
また、血液中には細胞成分だけではなく、血液を固まらせたり(凝固系検査:PT、APTT、フィブリノーゲンなど)、いったん凝固した血液を再び溶かしたり(線溶系検査・FDPなど)する働きを担う成分が含まれています。 これらの働きを調べる検査を血液凝固・線溶系検査と言い、専用分析装置を活用して約30分で測定しています。

尿検査とは、尿の成分を試験紙で使って、その試験紙の化学反応による色調変化によって尿中に排泄される糖やタンパクの量あるいは潜血の有無などを短時間に検査する尿定性検査があります。また、尿には、赤血球、白血球、その他さまざまな細胞や微生物、結晶などが含まれています。尿を高速遠心し沈殿物を顕微鏡で鏡検し、腎臓や尿路の状態を知ることができる尿沈渣検査があります。これら2通りの検査により腎臓機能や糖尿病の診断などに役立ちます。
尿定性検査は尿定性分析装置で、尿沈渣検査は尿沈渣分析装置で自動測定しています。

糞便検査とは、大腸がんのスクリーニング検査として広く普及している便潜血検査があり、消化管出血の検査として行われています。また、虫卵検査なども行っていて、寄生虫症の診断に役立っています。

微生物・感染制御部門

患者さんから提出された喀痰や尿・便などから、感染症を起こす原因となる病原性微生物(細菌・真菌・原虫・ウイルスなど)を特定して、治療に効果のある薬剤(抗菌薬)を見つけるために様々な検査を行います。

検査方法と流れ

検査材料を直接スライドグラスに塗りつけ、グラム染色などの染色法で色をつけて見やすくすることで、顕微鏡で病原菌の有無と量や形を観察します。

検査材料の種類や、推測される病原菌によって選んだ培地に検査材料を接種し、適した条件(温度や時間)で培養します。菌が発育したらその性状等を検査して菌の種類を決定(同定)します。

病原菌と思われる菌に対して、どの抗菌薬が効くかを検査します。抗菌薬と一緒に菌を培養し、発育状況をみて判定します。

血液を専用培養ボトルに注入し、迅速な培養を促します。菌が発育するとセンサーで感知し、技師に知らせます。

全自動血液培養装置

特定の菌のDNAを増幅させる検査法です。培養で発育するのに何日も要する結核菌などを数時間で検査します。

感染症管理センター、ICT(Infection Control Team)などと協力して院内感染をいち早く掌握し、感染拡大を防止しています。

輸血移植・救命救急検査部門

輸血移植検査

大きな怪我や手術時に輸血(自己血も含まれる)を必要とする場合があります。この時に必要な検査を実施し、適合する血液を準備することを業務としています。

ABO血液型とRhD抗原検査をしています。

輸血や妊娠によって作られた抗体を検査しています。

不適合輸血を防ぐ検査です。

バーコードによる確認照合システムを使って輸血用血液製剤の供給および保管管理をしています。

予定した手術時にあらかじめ採取しておいた自分の血液を使うための準備および保管管理をしています。

輸血移植・救命救急検査部門

救命救急検査

救急外来センターにおける検査の実施、医師や看護師のサポート、検査機器のメンテナンスなどを主な業務とし、救急外来センターのスタッフとして業務が円滑に進むように実行しています。

以下に記した検査を救急外来センターで実施し、迅速に報告するよう心がけています。
・血液ガス分析
・心電図測定
・妊娠反応定性検査
・POCT機器による血糖値測定
・インフルエンザ等の抗原検査(簡易キット)

検査以外にも以下のような業務を行っています。医師や看護師の業務が円滑に行えるようサポートしています。

  • 搬送患者の状態把握と必要な検査の準備
  • 採血介助
  • モニター類の装着
  • 検体搬送と検査室への患者情報提供
  • 患者搬送の介助
  • 危機的出血の対応(輸血)
  • 検査に関する問合せへの対応

病理・細胞形態検査部門

人体の組織材料からガラス染色標本を作製し、病気や治療効果の診断を行う検査です。

手術や内視鏡により摘出された組織材料を2~3㎛の厚さに薄切し、ヘマトキシリン・エオジン染色等を施して組織標本を作製します。この標本を病理診断科医師が顕微鏡で観察し、診断を行う検査です。

生体から剥離した細胞や、穿刺・擦過により採取された細胞をスライドガラスに塗抹し、パパニコロウ染色等を施して細胞診標本を作製します。この標本を顕微鏡で観察し、診断を行う検査です。

患者さんが不幸にして亡くなられた場合、ご遺族の理解と承諾を得て病理解剖を行っています。直接の死因や病気の進行状況および治療効果の判定などを診断し、今後の医療の進歩や改善に役立てられます。

手術中に摘出された組織や細胞の良性・悪性の鑑別や病変の診断を行う検査です。組織を急速に凍結することにより、短時間で標本を作成することができます。

遺伝子・細胞分析検査部門

遺伝子検査には病原体遺伝子検査、体細胞遺伝子検査、遺伝学的検査があり、当検査室では提出された検体からDNAを抽出し、主に体細胞遺伝子検査を行っています。この検査結果により治療薬の効果があるかがわかります。

生理機能・生殖医療検査部(生理機能検査)

生理機能検査

生理機能検査とは、生体からの信号をいろいろな装置で記録、解析する検査です。患者さんの身体に直接触れて検査します。循環器系(心臓・血管)、脳・神経・聴覚系、呼吸器系(肺・気管支)などの検査を行っています。

心臓や血管系の状態を波形や画像で表します。

心電図

手、足、胸部に付けた電極を介して心臓の電気的な変化を記録するもので、不整脈や心筋梗塞などの診断に用いられます。(所要時間約5分)

ホルター心電図

24時間にわたる日常生活中の心電図を記録し、後で解析して心電図異常を検出、診断する目的で用いられる検査です。(所要時間 装着に約15分)

心電計
負荷心電図

マスター2段階試験・トレッドミル運動負荷試験などがあります。階段やランニングマシーンを利用して運動を行い、心電図変化を観察します。虚血性心疾患(狭心症)や不整脈の診断に用いられます。(所要時間10~40分)

超音波検査(写真:超音波検査)

体表から探触子をあてて、苦痛を与えることなく、画像として抽出する検査です。心臓、頸動脈、下肢血管などを観察します。心臓では冠動脈疾患、弁膜症、先天性心疾患などに、血管では動脈硬化や血栓、静脈瘤などの診断に用いられます。(所要時間20~30分)

脳波

頭皮に付けた電極を介して脳の電気的変化を波形として記録したものです。てんかんや脳死判定などに用いられます。(所要時間40~60分)

誘発筋電図

運動神経や知覚神経に電気刺激することにより得られる電位を波形として記録したものです。筋肉や末梢神経障害の診断に用いられます。 (所要時間30~40分)

聴性脳幹反応検査

音刺激によって聴覚の神経系に誘発される電位を記録します。新生児・乳児・小児・成人の聴力の評価、意識障害の予後推定の診断などに行います。 (所要時間40~60分)

肺から出入りする空気の量や速さを調べることでレントゲンなどの視覚的検査ではわからない肺の働きを調べます。(所要時間10~40分)肺機能障害の有無と程度、治療効果、手術適応の判定のために行います。

生理機能・生殖医療検査部門(生殖医療検査)

生殖医療検査

総合生殖医療センターの培養室で生殖医療に関するラボワーク(検査や治療の補助)を担当しています。

精子の数や運動性、精子の形態を検査します。

精液を洗浄して濃縮または運動性のある精子だけを取り出して子宮内に注入する方法です。

手術により卵巣から卵子を取り出し、体外で精子と受精させ、子宮内に移植する方法です。1978年にイギリスで世界初の体外受精児が誕生し、1983年には日本初の体外受精児が誕生しました。

分割期胚
胚盤胞
顕微授精法(ICSI)

運動性や形態の良好な精子を1個選び、細いガラス管で卵子の細胞質内に注入し受精させる方法です。

補助孵化(アシステッドハッチング)

受精卵を保護している透明帯を削って薄くしたり、一部に穴を開けたりして孵化(ハッチング)を補助する技術です。当院では、レーザーを用いたアシステッドハッチングを導入しています。

タイムラプスインキュベーター(顕微鏡内蔵型インキュベーター)

受精卵の写真を10分間隔で撮影し、これらをつなげて動画にして受精卵の発育を観察します。この装置の導入により、良好な受精卵の選択が可能になりました。

受精卵の凍結保存と融解胚移植

体外受精で得られた受精卵を凍結し、必要時融解して子宮に移植します。
当院では、プログラムフリーザーによる凍結及びガラス化法による凍結を行っています。

培養室には卵子や精子を培養するための様々な機器があります。患者様からお預かりした卵子や精子をよりよい状態でお返しするため、インキュベーターや培養液、培養に用いる器具等、細心の注意を払って管理しています。

精子や卵子は将来生命になる可能性を有しており、医療一般に取り扱われている細胞や組織とは全く別な意味合いを持つ細胞です。精子や卵子の取り違え防止のためのマニュアル等を作成して安全管理に努めています。

認定資格・専門資格取得状況

分野認定資格・専門資格認定団体
血液検査認定血液検査技師
骨髄検査技師
日本検査血液学会
認定血液検査技師制度協議会
サイメトリー技術者日本サイメトリー技術者認定協議会
微生物検査認定臨床微生物検査技師
感染制御認定臨床微生物検査技師
日本臨床微生物学会
認定臨床微生物検査技師制度協議会
輸血検査認定輸血検査技師認定輸血検査技師制度協議会
病理検査認定病理検査技師日本臨床衛生検査技師会
細胞検査細胞検査士日本臨床細胞学会
日本臨床検査医学会
生理機能検査超音波検査士
・循環器領域
・健診領域
・消化器領域
・血管領域
・体表臓器領域
日本超音波医学会
認定心電検査技師日本心電学会
ソノグラファー日本リウマチ学会
日本臨床神経生理学会専門技師
(脳波分野)
日本臨床神経生理学会
生殖医療検査体外受精コーディネーター日本不妊カウンセリング学会
認定臨床エンブリオロジスト日本臨床エンブリオロジスト学会
生殖補助医療胚培養士日本卵子学会
糖尿病日本糖尿病療法指導士日本糖尿病療法指導士認定機構
栄養栄養サポートチーム(NST)専門療法士日本静脈経腸栄養学会
遺伝子遺伝子分析科学認定士日本臨床検査医学会
その他緊急臨床検査士日本臨床検査医学会
認定認知症領域検査技師日本臨床衛生検査技師会

当院の取り組み

豊橋市民病院中央臨床検査室では、質の高い臨床検査を提供するために各種検査の精度管理、新しい検査の導入、医療従事者の教育・研修、異常値の原因解明などに取り組んでいます。これらの活動は、臨床検査を終了した血液・尿などの検体(残余検体)を再利用することにより継続して行うことが可能となります。これまでに残余検体を用いた研究から多くの知見が得られ、臨床医学の発展に大きく寄与してきており、当院でも各種臨床検査法の性能評価、改良、開発などを行い、日常の診療に貢献したいと考えています。

対象

豊橋市民病院中央臨床検査室で検査が終了した患者さんの残余検体の一部

方法

個人情報を削除したうえで下記の内容について調査いたします。
1.臨床検査用試薬および測定装置の性能評価
2.臨床検査項目の基準値の設定およびその検証
3.臨床検査データと他の検査(生理機能検査など)や臨床診断との関連性

倫理的配慮

『臨床検査を終了した検体の業務、教育、研究のための使用について-日本臨床検査医学会の見解-』を順守したうえで行います。臨床検査後の廃棄予定の残余検体を使用するため、患者様の生命や健康に直接影響をおよぼすことはありません。また、氏名、生年月日、住所、電話番号などの情報はすべて削除し、必要に応じて匿名化しますので、個人情報が漏れることはありません。
成果は、医学の発展のために学会や論文などで発表させていただくことはありますが、その際も個人が特定される情報は全て削除いたします。再利用にご承諾いただけない場合においても、実際の診療内容に影響いたしませんし、診療上の不利益を受けることもありません。また、業務、教育、研究に使用するために診療に必要とされる検体量以上を採取することも一切ありません。

以上の趣旨にご協力いただけない場合は、お手数ですが中央臨床検査室(豊橋市民病院 代表電話:0532-33-6111)までお申し出ください。お申し出が無い場合は、ご承諾いただいたものと判断し、残余検体を再利用させていただきます。

現在実施中の臨床研究

豊橋市民病院中央臨床検査室では、現在、臨床研究を行っておりません。

更新日:2020年09月02日